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 ファーストフードでのバイトで、私は機械になる。来たお客にイラッシャイマセ、コチラデオメシアガリニナリマスカ、ソレトモオモチカエリナサリマスカ? 仮面のような笑顔を顔にべったりと貼り付けて、四時間を過ごし続ける。最近では、バイトの仕事をしながら、頭の中ではずっと別のことを考えられるようにな った。バイトでの仕事は全てもう体が完全に覚えきっているから、大丈夫。  だから、私はケータイ小説の内容を考え続けた。明日の朝、更新しようと決めて。  そのことを考えていたら、あっさりとバイトの時間は過ぎていった。 『アタシはミナ    東京にどこにでもいる女子高生    学校行って、バイトして、それだけ    毎日毎日同じことの繰り返しでツマラナイ    笑うことも少なくなった    何もかもが楽しくなくなった    誰かを好きなることもなくなった    彼氏もイマはいない    まえは、タメのケンと付き合ってた    でもケンのアイシテルって言葉はいつも嘘だった    だから、ケンはあっさりと私を捨てた    アタシはケンのキープだったって後から気づいた    今思えば、バカだったと思う    もう、オトコたちの言葉を信じられない    アイシテル    ダイスキ    嘘    だれも、アタシを見てない    見てるのはアタシの体だけ    ツマラナイ、クダラナイ    今日もあたしは学校に行って、バイトに行く    何も変わらない    運命のあの日が来るまで、アタシはずっと、そう思ってた    ずっと』  私は更新したページを見て、特に何も思うこともなく、携帯を閉じて、それをバッグに仕舞った。  まだ、始まったばかりだから、たぶん反応はない。  でも、これからどんどん衝撃的な内容にして、他にも順位を上げるようにして、いつか書籍化する。そう、心の中で自分に宣言して、私は学校に向かうため、家を出た。  行ってらっしゃい、という家族は誰もいない。私は家族が大嫌いで、無理やり東京に出てきた。だから、一人暮らし。  一人暮らしは大変だけど、あの大ッ嫌いの家族と一緒に暮らすくらいなら、一人で過ごすほうが楽に決まっているし。
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