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しかし、それも過去の話。
――後の世も巡り会へ、か。
我ながら、なんと陳腐な台詞を思い付いたことだろう。
あの頃は、彼が総てだった。
彼さえいれば、それで良いとも思えた。
来世でも、再び愛し合える自信があった。
でも、
今は、
「『私』は、弁慶を愛しているのか…?」
この愛はするぎない本物だけれど、
それでも、ふと、疑問に思う。
「『今の私』も、弁慶を愛しているのか…ッ?」
ただの過去の記憶なのではないかと。
今の彼ではなく、あの頃の彼に執着しているのではないかと。
そう、思わずにはいられない。
だとしたら、今の自分は何なのだろう。
今の自分達は、ただの、過去の残像にすぎないのではないか。
自分は…此処に存在して良いのだろうか…?
「…、どうすれば…良いのだ…ッ?」
『彼』は間違いなく、
私の大切な人。
私の愛した人。
唯一人の―――。
そう思っても、
いいのだろうか………?
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