男はお人好しだった。

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お風呂からあがってきた少女は、髪の毛を乾かそうともせずに、男の部屋の物色をし始めた。 その後姿を見ながら、男は止めようともせずに、機械人形ってそういえば風呂に入っても大丈夫なんだっけ?とかそういった類の事を考えていた。 まぁ、駄目だったとしても、今となってはもう手遅れなのだが。 活発に男の部屋を荒らしている少女を見る限り、エラーが起こっている心配もないし、大丈夫かと男は思った。 そして、彼女が手にしたものが何なのか気づいて目を丸くした。 「あはは、クダラナイ本ー」 「笑うなよ」 けらけらと笑いながら、少女がページを捲っているのは間違いなく、男が描いた絵本だった。 しかもずいぶんと昔に描いたやつだ。 押入れの奥にしまっていた事も忘れてしまったほど昔にしまったものだったのに、見つかってしまうとは何て事だろう。 「でも、面白いの」 「今さっき、くだらないって言わなかった?」 「クダラナくて、面白ーい」 馬鹿みたいに、きゃらきゃらと笑いながら、少女は絵本を捲っていく。 馬鹿にされてる感が拭えない男は、少女の方を眉をしかめ見つめる。 少女は笑っている。 そんなに笑えるような内容でもなかった本を見て笑っている。 機械人形は空気を読むという事が出来ないのであろうか。 男は、自分の心の中に溢れていく『やるせなさ』という感情を抑えるのに必死になった。
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