男は尋ねてみた。

2/4
前へ
/40ページ
次へ
少女を布団で寝かせ、男はソファに横になる。 もう眠ってしまったかもしれない、相手に、暗闇の中それでも尋ねてみた。 「何で俺に壊されたいの?」 少女は、むにゃむにゃとわけ分からない事を呟いてから 「似てるの。私とアナタ。ピノッキオと私より、似てる」 なんて事を口ずさんでみせた。 ピノッキオとは有名な童話に出てくる、あの人形のキャラクターだろうか。 彼は、睡魔に負けそうになる瞼を必死で持ち上げつつ考える。 確か、最後には人間になる事が出来た人形の話だったと思う。 「早くしないと、私は壊される前に壊れてしまうの。だから、壊してね。早く壊してね」 少女は呪いのように何度もその言葉を呟き、やがては寝息をたて始めた。 ずいぶんと厄介な娘を拾ってしまったものだ、と男は思ったが、何も言わなかった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加