男は売れない絵本作家だった。

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彼は、売れない絵本描きだった。 毎日毎日、使い古された言葉や、特に秀でて特徴もないよくあるイラストを描き続け。 食料や、画材を買いに行く時にしか家の外に出ようとはしなかった。 堕落していると彼は思っていた。 自分はすでに堕落しつくしているのだ。 人のフリをして人として生きているように見せかけて、本当はただ人の形を保とうとしているだけのただの人形のようなものなのだ。 この心臓も本当はもしかしたら、人間に真似て作られた模造品で、本来の役割を果たしていないのかもしれない。 自分は今まで自分の事を人間だと思い続けてきたが、最近ではそれも危うくなってきた。 何せ、自分は堕落しているのだ。
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