男はお人好しだった。

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言っている言葉の意味が分からない。 よっぽど壊れてしまっているのだな、と彼は頭をかいた。 とりあえず、勝手に変な事をされては困るので 「別に良い」 とだけ返しておく。 聴覚機能は幸いにも破損してなかったようで、目の前にいる人形は 「了解いたしました」 もう一度微笑みを浮かべ、頭を下げる。 ふわりと、水色の髪が揺れたが、それは汚れてしまっていた。 昔のどこかの国の言葉で、宝の持ち腐れという言葉があった気がしたが、それはこういう時に使って良い言葉だろうかと男は頭の片隅で考えていた。 少女は笑っている。 何も言わずに笑っている。 その笑みは、ただの作られたもので感情なんてカケラも感じていないのにはりつけられているのだ。 男は思った。 堕落している、この世界は。 こんな、つまらないものを作る人間達なんて堕落してしまっている。 目の前にある少女は笑っているが、男は何故だか泣いてしまいたかった。 「それはそうと、ツカレタ。シニソウ」 「は?」
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