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Sea is
「海へ行こう」
僕の誘いに彼女は小さく頷いた。とても魅力的だったけど、もっと素敵な笑顔を知っている。それはどこへ置いてきた?
初春の海は穏やかだった。浜辺には白い貝殻が落ちていて、ふたりでゆっくり拾い集めた。
貝の端が欠けていると彼女が嘆いた。でもそれは悪い事じゃないと僕は伝えた。何かを補うために正しく在ろうとする姿は、美しいと思わないか?
僕の言葉に彼女は納得したようで、満足げに採集へと戻って行った。
その時僕はひらめいた。儀式だ。これから儀式を始めよう。
まずはあの高台に登り、お祈りをする。そして口づけのために君はちょこんと背伸びをするんだ。僕は貝殻を抱えたままだし、君はとても小さいからね。
それが済んだらこの落し物を海へ還そう。
両手いっぱいの貝殻を、ぽーんと海へ放ったら、冬の星座みたいにきらきらと、水面に消えゆく事だろう。
やがて水しぶきを上げて女神が現れる。金か銀かと聞かれたら、君の笑顔だと答えるつもり。きっとすぐに返してもらえる。
海が微笑む。藍を涙で溶かした色だ。
冬が終わり、春が来る。
ルルル小さな鼻歌が聞こえる。
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