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イヤホンを耳につけ,利緒は音楽を聞いていた。べつに音楽を聴きたいからじゃなかった。ただ人の声を聞いていたくないからだ。利緒が使うバス停は普段他の人は使わなかった。誰もいないからこそ彼女にとっては居心地がよかった。しかし珍しい事にその日は人が来ていた。
(なんか不愉快)
利緒はバス停に来ていた青年をそう思いながら見ていた。ふと青年と目があった。
(サイアク~!!)
利緒はそう思いながら目をそむけた。青年はバックから手帳とボールペンを取り出すと何か書き始めた。やがてバスが来た。利緒は青年にかかわるまいと足ばやにバスに乗った。しばらくして青年も乗って来た。利緒は目を合わせないように窓の外を見ていた。青年が利緒の隣を通りすぎた時だった。
ペラ・・・・・・
っと一枚の紙きれが利緒の隣に落ちた。その紙には
「君は未成年だよね?私服だし,俺と同じ大学生にも見えない。警察に補導されるのがオチだね。何かあったの?俺一応心理学の勉強してるから悩んでる事とかあったらここに連絡して。」
というメッセージと連絡先,そして「涼」という名前が書いてあった。
(涼・・・か。って何考えてるの!?私!!)
利緒は紙きれを破ろうとした。しかし・・・破れなかった。たかが紙きれ一枚のに破れなかった。それ以前に利緒は涼に複雑な思いを寄せていた。
何故私に構うのか,どうして私を助けようとしてくれるのか・・・考えただけで涙がでた。利緒は初めて会っただけで涼に
そして生まれて初めて恋に落ちた。
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