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ユイが梓に、自分を振り回す厄介な友人二名についてあれこれ愚痴をこぼしていると、微かだった車の揺れが完全に停止する。
「着きました」
素早く車を降りた梓がゆっくりと車のドアを開け、ユイは礼を言って車から降りる。
――その瞬間だった。
「きゃあああっ!!」
古びた洋館から響いてきた悲鳴に、ユイの体が弾かれたように動き出す。
「ユイ様っ!」
とっさに制止しようとした梓の手を振り切って、館の扉を乱暴に開けて飛び込んでいった。
そこには二体の石像があった。
一つは祈りを捧げているような姿の美しい女性。
そしてもう一つは、好奇心いっぱいの瞳で石像を見つめている長髪の少女。
「何なの、これ」
酷く混乱した様子の和葉の悲鳴をたよりに飛んできたユイの瞳に映ったのは。
すすり泣く和葉と美しい像。
そして、変わり果てた友人の姿だった。
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