「一章」

11/17
前へ
/84ページ
次へ
「治す方法を知りたいか?」 「……え?」 突然耳に届いた冷たさの感じられる少年の声。 ユイは辺りを見回すがその姿は見えない。 「だ、誰?」 「質問に答えろ。治したいか、否か」 高圧的な言葉にユイはむっと腹を立てたが、それを何とか堪える。 「な、治したいに決まってます!」 「……ならば探せ」 「は?」 何を、と聞こうとした瞬間。 部屋全体を強い白の光が包んだ。 その光は徐々にユイの体のみを包んでいく。 「……っ!?」 そのあまりの眩しさにユイは溜まらずぎゅっと目を閉じた。 「……いったぁ…」 小さなうめき声を上げて、和葉はゆっくりと目を開く。 そして顔をさすりつつ体を起こすと、怪訝な顔で周囲をきょろきょろ見回して首を傾げた。 先ほどまでと変わらない、ほのかに埃っぽくて暗い部屋。 スミレと女性の像もある。 しかし…… 「ユイちゃん……?」 そこにユイの姿だけは無かった。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加