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「……は?」
100年前の魔界というあまりに突拍子もない言葉に、ユイは思わず男から後退る。
――きっと彼の脳の半分は、自分に優しい夢と妄想で構成されているに違いない。
平たく言えば変な人、又は可哀想な人。
そうユイの頭の中での男の位置付けが一瞬で決まる。
聞かなかった事にするのが常識人としての優しさだろう、そう何とか混乱した頭を鎮めようとした。
しかし……
「ここは僕達の時代から100年程昔の魔界だと言っている。2度も言わせるな」
腹立だしげに再び言われた言葉に、ユイは突然爆撃されたような衝撃に襲われた。
言葉を失うユイを尻目に男は続ける。
「ここは貴様のいた世界とは違う。魔法があり魔物が巣喰い、下手をすれば死ぬ」
死ぬ。
その一言でユイの表情が凍りつく。
「冗談じゃない! 何で私が!?」
たまらずすごい剣幕で怒鳴った。
疑おうにも男の眼差しは嘘をついているようには見えない。
不吉な事を言われ、ただでさえ混乱しているユイに、少しの沈黙の後……男は静かに告げた。
「これは貴様の望んだことだ」
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