147人が本棚に入れています
本棚に追加
その頃、一足早く屋敷の前にやってきた和葉とスミレは、ユイの到着を待たずに屋敷の中へ入り込んでいた。
「うー…真っ暗で何も見えないや」
入り口を閉めて周囲を見渡した和葉は、はぐれないようにスミレの服の裾を掴む。
それを感じたスミレはゆっくり前進を始めた。
「視界さえ慣れれば大丈夫だよ。懐中電灯を持ってこなくて正解だね」
和葉は頷く。
「へたに懐中電灯で照らすと、怖くない物まで怖く見えることもあるし」
「特にユイちゃんは!」
同時に出た台詞に、二人はぷっと吹き出してしまった。
「……あ、階段だ」
手探りで進んでいたスミレが、手すりを掴み階段を上がる。
和葉もその後に続いて慎重に進む。
ギィィ
軋む音を立てて階段を上りきると、闇に慣れてきたスミレの目が、その突き当たりに何か扉のようなものを捉えた。
「どうしたの?」
和葉が顔だけを脇からひょっこり覗かせる。
「部屋があるみたい」
スミレは扉に近付くと、微かにドアノブを引く。
鍵は掛かっていないようだ。
「入ってみよ!」
「でもユイちゃんを待った方が……」
「ユイちゃんが気絶するほどの物があったらどうするの?」
そういうのがないのか確認するために早く来たんだから、そう言って笑う和葉に観念して、スミレはゆっくりドアを引いた。
最初のコメントを投稿しよう!