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「檸檬て素敵じゃない?」
僕は檸檬が素敵かどうかについて少し考えてみた。
たしかに檸檬は素敵だった。
「あの鮮やかな黄色は植物の果実としては希有なものだし、食用で許せる酸っぱさとクセのない爽やかな清涼感は檸檬の他に代わりはきかないね」
僕は思いつく限りの檸檬の素敵さを簡潔に述べた。
彼女は僕の見解を頭の中で整理するように宙を見つめてから、またカタログに目を落とした。
「牡蠣フライにはなにをかける?」
彼女が訊く。あるいは彼女は植木のカタログに訊ねたのかもしれないけれど、僕はそれに答える。
「檸檬」
「そういうことなのよ」
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