第1話「訪れた、crisis」

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-宇宙、作戦Eポイント- 機体が一機、漂う。 闇より深く、黒い漆黒のボディ その装甲のスリットラインから排出する赤い…血のようなワインレッドの光。 黒と赤を宇宙で演出するその機体には、まだ若きパイロットが乗り込んでいた。 「こちらルシド。少々戦闘に時間がかかった。目標Eポイントまで孅滅。マリアン指示を。」 機体の色に合わせた漆黒のパイロットスーツを身に纏う若い男の名は、ルシド。 ヘルメットから少し覗ける顔の左半分は、渦々しい刺青のような傷がある。 「降下部隊が作戦を開始しました。ルシドはこれの護衛に向かって。」 綺麗なロングストレートの金髪が印象的な女性は、マリアン。 ルシドと同じカオス軍特別機動部隊で専属オペレーター兼作戦パートナー。 黒い機体のメインモニタ、その右サイドに表示されているのは通信画面。 マリアンの整った顔と 『ONLINE』の文字 「久しぶりの実戦だ。データをもう少し取らせろ。」 「ダメです。今作戦は地球降下が最優先実行項目よ。前作戦の二の舞になったら元もこもないの。3年越しの作戦なんですから!」 ルシドの要求を間髪入れずマリアンは否決した。 「こちらとて3年も待った。しかも対TMAの良いデータが取れる絶好の機会だ。」 すかさず、バツの悪そうな口振りでルシドは反論した。 「ルシド、貴方の気持ちもわかるわ。いまだ未解析の技術がブラックボックス化されている正体も性能もわからない機体のデータ採集……私も早くデータを集めてその機体を解析したいところよ。そんなわけのわからない機体にあなたを乗せたくないし。」
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