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「何で智くんなんだろうね…?」
陸の掠れた声。
それは、全てを諦めたような、全てを放棄したような声。
「…え?」
涼が聞き返すと、陸の鼻をすする声。
後ろから音がしないことから考えると、廊下で彼女は泣いているのだろう。
自分は抱きしめにいけない。
この2人の逢瀬には皆の疑問と問題が含まれてる。
自分の鏡に彼女は今問いかけているから。だから、自分は口出しなんて出来ないのだ。
「何で、智くんが白血病にならなきゃいけなかったの…?」
『俺、白血病なんだ』ー『俺、死ぬんだ』
あの言葉の裏に、智也の悲痛な叫びが隠れていた。
『死にたくない、生きたい、千紗と、生きたい』って泣き叫んでいた。
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