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「千紗ー、レポート出した?」
「え?」
いつの間にか、涙が頬を伝っていた。
ーあぁ、私はまた、時間を巻き戻していた。
此処は大学の寮部屋。
相棒の設楽 陸。高校生の時一緒につるんでいたグループの一人。
千紗は部屋の隅で、昔撮った色褪せたプリクラを見つめていたのだ。
ー2人とも、幸せそうな顔をしてるよ、智くん。
泣いている現在の親友と、過去のひたむきな親友が一致しないもどかしさが陸の心を締め付けた。
千紗は慌てて服の裾で目尻を拭う。
強く拭ってしまったのか、目尻が微かに赤くなっている。
「…千紗、」
陸は言葉を紡いで口をつぐむ。
ーもう、智くんは居ないんだよ?
智くんはー…
伝えてやるべきなのだろう。
だけど、
「千紗を、泣かせたくないんだ。だから、約束して欲しい。」
そう、背中で語った彼を誰が責められただろう?
陸は泣きそうな気持ちでドアを閉めて千紗を見つめた。
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