いつか当たる壁

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 前に訪れた時もそうだったが、俺はザルファーという街の、本来の姿を見た事がなかった。  今回もそうだ。  人の気配はするのに、姿の方は全く見えない。  恐らくこれ以上の厄介事に巻き込まれないよう、ザルファーの住人は各々の縄張りに引きこもり、扉に鍵を掛けているんだろう。  だがその選択は正しかったと言える。  街全体がかもしだす無言の、不気味な圧迫感と共に、見覚えのある緑色の戦闘服が脇の道から姿を現す。
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