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真っ黒な中の一筋の光
あたしは16才になって初めて恋をした。
相手は2つ上の岡田先輩。
岡田先輩は美術部の部長で、あたしはただの部員。
誰もが通り過ぎていくあたしの絵を、岡田先輩だけが立ち止まり「見ていると心が澄んでいく絵だね」と静かに目を細めて言ってくれた。
単純なあたしはその岡田先輩の一言に、その小さな笑顔に、恋をした。
だけど岡田先輩にはとても綺麗な彼女がいる。
叶わぬ恋と理解っていても、走り出した恋心は止まらない。
先輩と同じ空間にいられるだけでいい。
先輩を見つめられるだけでいい。
付き合いたいなんて願わない。
だから、好きでいさせて下さい――
そんなある日、岡田先輩が彼女と別れたと噂で聞いた。
どうして!?
あんなに素敵な彼女だったのに……
あんなに仲良くしていたのに……
「君と君の絵に恋をしたんだ。付き合って欲しい」
突然の岡田先輩の告白で、破局の理由が理解った。
「……はい。あたしも、好きでした」
先輩を好きになって3ヶ月後、あたしの恋の成就、彼女の恋の破局。
2つのstoryが生まれた。
『人を不幸にして、自分だけ幸せになるなんて最低!!』
『あんたなんか岡田君の彼女に相応しくないのよ!!』
『ブスのくせに幸せになろうなんて身の程知らず!!』
ただ好きなだけなのに
どうしてそんな風に言われなきゃいけないの?
あたしだって
彼女と同じように
恋をしただけなのに
岡田先輩と付き合い出して、いろいろな中傷を浴びるようになった。
だけど――
「未来だって幸せになっていいんだよ?未来が岡田先輩を本当に好きだったこと、あたしは知ってるから」
「菜恵ちゃん、……ありがとう」
親友の言葉が
菜恵ちゃんの微笑みが
傷付いた、頑なに閉ざされたあたしの心を
溶かしてくれた。
わかってくれる人が一人でもいてくれるだけでいい。
応援してくれる人がいるだけで、中傷の言葉はあたしの心から消えていった。
❤End
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