感染ー1ー

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今でも、信じられない。 どうして由香が死ななくてはいけなかったのか。 棺の中に眠る由香を見て、私は心底絶望した。 白い肌に残る、無数の赤い傷痕。 苦しかったに違いない。 痛かったに違いない。 幸せになれるはずだったのに。 一度止まった涙が、再び零れ落ちてくる。 私はハンカチで目を押さえながら、再度 「自殺は有り得ません。」 と言った。 刑事は数秒沈黙し、またあごをさすってから 「ご協力有難うございました。」 と軽く頭を下げた。 「あ、そうだ。」 男は顔を上げると、ごそごそと胸ポケットを探り、名刺入れを取り出した。 「何か気付いたことがあったら、連絡して。」 差し出された名刺。私はゆっくりと手を伸ばし、それを受け取った。 「辛いことを聞いてすまなかったね。」 そう言い残して、男は去っていった。 「東和…雅一。」 手に残った名刺を眺める。 名刺には名前から電話番号まで記してあった。
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