雨に触れる距離。

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昇降口までたどり着くと既に人気はなく靴に履き替え少し、出たところで雨宿りしている葵に気付いて私は足を止める。 傘は一つ、このまま気付かない振りをして帰ってしまおうかとも考えていると葵が観念したように鞄を頭の上に傘代わりに置き走り出そうとしているのに気付く。 『ま・・待って。』 「ゆりあサマ?」 『私バスで、途中までなら同じだから』 絞りだした声は雨にかき消されたのかと思うほど小さくて葵に聞こえないかと思っていた私の声に葵は足を止めて視線を向けてくる。 私は自分で呼び止めたにも関わらず戸惑ってしまい上手く言葉にすることが出来ず、手に持っていた傘を開き雨を遮るように挿し葵に近づき少し傘を葵に傾ける。
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