雨に触れる距離。

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「もしかして、入れてくれるってこと?」 『貴方に風邪引かれたら仕事増えて大変なの。 ほら、行くわよ』 葵の言葉にかぁと顔が紅に染まりそれを葵に気付かれまいと視線逸らすように顔をそっぽに向け歩き出す。 葵はそんな私の様子に気付いているのかいないのか、小さく笑い声を漏らすと私の手にしていた傘の柄の部分を掴み私の手から引き抜くと私と葵の頭上から雨を遮るように傘を持ち歩幅を合わせ歩き出す。 私は何を話していいのか分らず黙り込むと葵も困っているのかいつもはおしゃべりな癖に、珍しく口を開くことは無かった。 傘を打つ雨音と車が溜まった雨水を跳ね飛ばす音だけが響くバス停までの長いようで短い距離。
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