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「どう考えても怒ってるようにしか見えないんだけど」
私のすぐ隣に並び同じように歩き出した葵が不意に私の顔を
覗き込むように体勢を向ける
。
『怒ってないと言ってるの』
私はその体勢に驚いてしまいついつい口調がきつくなってしまった。
事にはっとする。
怒っている訳じゃなく人混みをすり抜けて微かに息を乱しながら走る葵をかっこいいと思ってしまい見惚れた自分が恥ずかしかっただけだということを知られたくは無かった。
「ふ・・ん」
それからショッピングセンターに入り必要な物を見つける度にあれやこれやと葵と相談しながら決めていった。
『そうね、でもこの色は少し濃すぎると思うわ』
「なら、こっちとか?」
『ええ、それなら』
「なら、決まり」
いつの間にか最初に流れた不協和音が消えていて、葵との距離は自然なものとなっていることに私は胸を撫でる。
「なかなか面白い展開。
感謝しなさいよ、王子」
私達を追う影の存在に私は気付いていなかった。
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