触れられない唇と触れる唇。

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『取れ・・た?』 「やったー。お兄さん」 「これぐらい当然・・っと」 ホッとしたのも束の間、葵は木の枝から足を滑らせてしまい バランスを崩す。 私はその光景を見ていられず思わず両手で顔を隠すとバッシャンと大きな水音が響きお兄さんと呼ぶ少女の声で私は両手を下げる。 見ると葵は噴水の中に落ちていた。 『ちょっと、大丈夫?』 「カッコ悪、大丈夫。それからこれも」 心配して駆け寄る私と少女を他所に葵は立ち上がり、少女の長い髪にリボンを結い上げる、少女は自分の髪で揺れるリボンを見ながら嬉しそうにはにかみ笑むと私と葵に手を振ると公園を出て行く。 『びしょ濡れ、本当に怪我ない?』 私は持っていたハンカチで濡れた葵の髪の水滴を拭うと葵は平気平気と笑って見せた。 私と葵は公園を出ると近くの店で葵の服を買い店で着替えさせてもらった。 「あっ、このクッキー」 店を出たところで葵は濡れた服の中から潰ればらばらになった。 あのクッキーを取り出した。 「うゎ・・中の紙も読めねえし」 葵がその手に取った白い紙は水で滲み読むことが出来なかった。 私は鞄から同じクッキーを取り出し封を切ると少し割り中の白い紙を取り出し文字列を視線を落とす。 するとその紙は読み終わる前にスルリと私の手を離れ葵の手に収まっていた。 『それ私の』 「え・・何々、貴女は今から目の前に相手に口付けるでしょうって」 取り返えそうと両手を伸ばすも私よりも背が高い葵は紙を自分の視界の高さまで上げ取り返すことが出来ない私を笑いながら読み上げた葵の言葉に私は固まる。
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