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「あっ・・ゆりあサマ?あんまり怒ると可愛い顔してるのに勿体無いと思うな」
『なっ・・貴方には関係ないわ』
歩く足を止め急に真剣な声色で私を呼び止めた葵の言葉に私は今にも怒りをぶつけてしまいそうになった。
そんな私の態度を楽しそうに肩を揺らしながら笑う葵はそのまま女子生徒達と図書室を出て行く。
室内にはいつもの穏やかな静けさが戻り、私は収まらない怒りを静めるように心の中で何度も冷静にという言葉を繰り返し呟く。
『誰のせいよ・・私の苛々の原因の癖に』
元の席に戻るとムッと唇を噛むように呟き椅子に座る。
そしてまたしおりを外しページを右手親指と人差し指で捲り文字を視線で追う。
私の苛々の原因はいつも彼でその理由はあのチャラチャラした態度だけじゃないこと。
私はもう気付いていた。
でもこの気持ちは彼には言いたくない、言わないそう決めていた。
大嫌いな彼に対しての私の思いは水滴が落ち器に溜まるように心の中で静かに湧き出していた。
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