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「会長?こんな場所で何してるんですか?」
その声は聞き覚えのある伊織の声だった。
私は泣きそうな顔を見せたくなくて黙ったまま俯くほんの数秒の間と沈黙が流れたかと思えば私の背中に温かな熱と重みそして自分の首下に掛かる細くてもしっかりした伊織の腕が絡みつき私は驚いて固まる。
「何があったか知りませんが泣いてもいいですから。
僕、見てないですし」
伊織の言葉や気持ちや背中越しに伝わる体温に私は張り詰めていた糸が切れるかのように頬に涙が流れ落ちる。
「海藤先輩ですか?」
私は伊織の言葉に大きく首を左右に振り無意識に伊織の腕に添えた。
手に力をいれると察したのかそれ以上葵の名前を伊織は口にしなかった。
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