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「あ・・あ、美人が台無し」
李瑚はいつもと変わらない様子で私に歩み寄ると自分の上着のポケットからハンカチを取り出し私の頬を拭う。
私は堪らず李瑚に両腕を伸ばし腰元に抱きつき、顔を押し当てまた泣いた。
『・・もう嫌。
苦しいのもドキドキするのも
もう嫌なの』
私は李瑚の身体に抱きついたまま声を震わせながら、途切れ途切れに言葉を口にすると李瑚は私の話に相槌を打ちながら優しく右手を私の頭に置き撫でてくれた。
「ゆりあ・・・」
諦めようとすればするほどに深みにはまり、抜けない棘のように胸に突き刺さる痛み。
好きすぎて苦しくて苦しくて
どうしようもない想いが私を責める。
李瑚は頭を撫でながら時折何か言葉をかけてくれたのかもしれない、でも心に余裕が無い私は李瑚の言葉を正確には覚えていない。
ただ、覚えているのは優しい声と頭を撫でる手そして私を包み込むような温かな李瑚の腕だけだった。
李瑚みたいな男の子好きになればこんな気持ちにならずに済むのかな、でもきっと変わらないね。
だって苦しくて刹那いのが恋だと誰かが言っていたから。
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