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『私、まだやらなきゃいけないことがあるわ。
それじゃ・・・』
「あのさ、本当に迷惑?」
出て行こうとする私の右手を葵は掴み制しさせる。
私は身体をビクっとひくませると葵の言葉に俯いてしまう。
『・・・迷惑、とても迷惑よ』
「ああそうかよ。
悪かったな迷惑かけてもう迷惑かけたりしねぇから安心しろよ、会長様」
私の手を離すと私の顔を見ずに葵は冷たく鋭い刃のような、言葉をぶつけるとバンっと扉を乱暴に開けながら出て行ってしまう。
「今のは、ゆりあが悪い」
『李瑚・・』
「いいかげんにしなさい。
ゆりあ、いいの?このままで
本当に後悔したりしない?辛くて苦しいのは恋してるからでしょ?
どうせ傷つくなら精一杯やって傷つきなさい、失恋したら私の胸貸してやるしね」
煮え切らない私を叱咤するように李瑚は強い口調で怒鳴りつけるとだんだん口調を戻して行き最後はいつもと変わらない。
笑顔を向ける
「そうですよ、先輩。」
『伊織君まで』
李瑚が入ってきた扉から伊織が後ろ頭を右手で掻きばつが悪そうに笑う。
「会長探してたら、声が聞こえて・・立ち聞きしてしまいました。
僕、まっすぐ自分を出すゆりあ先輩が好きでしたっていうか
今も好きです。
素直になることは恥ずかしいことじゃないですよ。
僕が好きな先輩のままで居てください」
二人の言葉が私の胸を揺らし染み込む。
意地を張り続けた自分を戒める。
葵と出逢って初めて知った感情は戸惑うばかりその感情を認めたくなくて《嫌い》を呪文のように呟いていた。
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