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『・・ありがとう、逃げるのは
もう止めるわ』
きっとこのままだったら、私は葵ではなく自分を嫌いになってしまう。
覚悟は決めた。
後は前進するだけだと心が私を動かす。
「よし、じゃあ・・これ」
李瑚が差し出したのは深紅のバラと私が密かに鞄に入れていた葵宛のチョコレート。
『いつの間に』
「私達、親友でしょ?告白には深紅のバラを捧げる、それが今日のイベント。
せっかくのチョコ無駄にしたくないし」
私は李瑚からそれを受け取ると一度ぎゅっと抱き締めた。
『行って・・きます』
私は李瑚と伊織に微笑みかけると両手でしっかりチョコレートとバラの華を一本抱えて、教室を出て行く。
向かう先は心が知っている。
「ようやく、肩の荷がおりた。
ってか、私が言うのもなんだけど、あんたは良かったの?姫好きだったんでしょ?」
「好きですよ、今もね。
でも、僕が好きな先輩は海藤先輩を見ていた先輩ですから敵いません。
でも諦めた訳じゃないですけど」
私が出て行った教室で二人がそんな会話をしていたことなど私が知るはずもなかった。
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