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私はその周りの熱に足を止め舞台に視線を向ける。
『葵・・いた』
灯台もとくらしとはよく言ったもの、その舞台の上に葵と姫宮の姿があった。
私は盛り上がる人混みを突き進む。
けれどなかなか前に進めずもたついていると舞台上では姫宮が頬染め葵に気持ちを伝えていた。
「好き」
私の言いたかったその言葉を姫宮は葵に告げた。
静まる会場、息を呑む観客達。
葵は暫く考えると、姫宮に近づき差し出された深紅のバラに手を伸ばす。
煽る司会者役の生徒、私はいてもたっても居られず傍に居たその司会役の生徒からマイクを奪い取る。
『・・駄目!!その告白待って』
以前の私ならきっとこんなことしなかった。
けれど何も伝えないまま終わるなんて出来ない。
一斉に集まる視線と葵と姫宮の視線に怯みそうになる。
「ゆりあ・先輩、大丈夫(です)」
そう叫んだのは李瑚と伊織、その瞬間、私の迷いは消えた。
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