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「嫌いの好きってゆりあ、らしいつうか。
・・すっげぇ好き。
俺も好き」
笑いながら葵が囁いた言葉は私の涙を止めるどころか歯止めを利かなくさせた。
静まっていた筈の会場はたちどころに沢山の声と拍手に包まれた。
私は私の身体を解放し近づく葵の唇を右手掌で制す。
「なんぶぇ」
不満そうな顔をする葵と会場の声、それをかき消すように私はマイクを自分の胸元まであげる。
『私、嫉妬深いし独占欲強いみたい。
だからその他大勢の好きなんて嫌、ましてや葵が他の人に好きって言うのも嫌、だから・・私だけ見てなさい、じゃないと嫌』
我侭だ。
でもそれが私の気持ち、その他大勢なんて嫌で特別じゃないと苦しい。
そんな私の言葉に葵は呆気に取られた表情を見せるすぐにその表情は笑顔に変わる。
そして制す私の右手を掴む。
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