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『引けない、奪わせたりしないわ。
絶対』
「ゆりあ。」
名を呼ぶ葵の声に振り向こうとすると直ぐに右手を葵の左手に繋がれる。
「とりあえず逃げるぞ、あいつ等から」
『あいつ等って』
葵が指差す後方へと視線を向ける、歓喜と好奇心に満ちた瞳で会場に居た生徒達が追いかけてくる。
私は思わずぎょっとし葵に視線を戻すと葵は走り出す。
私の身体は葵に引かれるようにつられ走る。
『ねぇ、何処に行く訳?』
「んーとりあえず誰にも邪魔されずにもう一度キスできる場所」
『・・っ馬鹿』
葵はまた笑う、はっきり言って今の状況、かなり大変なのに何でも無いことのように葵が笑う。
ただそれだけでこの大変な状況が大変じゃなくなる。
出逢いは偶然だとか必然だとか言うけれど、この出逢いはきっとお互いの心の奥の恋の種が共鳴したんだ。
引かれるように出逢った私達は初めて生まれた感情に戸惑いぶつかり合い傷つけあって、そして惹かれるように恋の華咲かせた。
きっとこれからも枯れることなく咲き続ける。
そう何度でも、信じられる。
葵のこの手の熱がそう思わせた。
「本当はして欲しい癖に」
『葵なんて嫌い、もう知らないわ』
でも先のことより私達は今、この瞬間、目の前の相手に精一杯、好きを伝えることが大事。
明日もきっと好き時々嫌い 《The end》
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