零れた優しさ。(番外編)

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『・・んっ・・やっ・・駄目』 「嘘、いいじゃん」 『嫌、離れて。 じゃないと仕事出来ない』 私は私の視界を塞ぐように前に立つ葵の身体を少し両手で押す。 あのバレンタイン以来、隙あらばキスや必要以上に身体に触れようとする。 葵を制すのに私は必死だった。 嫌な訳じゃなくて、キスされたり私の身体を滑る葵の手が思考を麻痺させてしまうことを知っている、だからこそ私は拒む。 「・・たくっ、仕事なんて後回しでいいだろ?」 『駄目、こないだの議会の報告書まだ出来てないんだからそれに場所考えなさい。 生徒会室だからって誰も来ないとは限らないのよ』 明らかに不満そうな葵を横目に見ながら私は離れ、自席に座りパソコンの電源を入れる。 もっと触れて欲しかったとういのが実のところの本音だったりするのだけど恋愛したから業務を怠るなんて言われたくもないしましてやこんな場所で葵に触れられたら私の理性が持ちそうにない。 我を忘れそうで怖かった。 暫く文句ばかりを口にしていた。 葵は途端に静かになり、私はキーボードから手を離し葵に視線を移すと机に伏せ規則的な寝息を立てている。 私は立ち上がり奥に閉まって置いた。 ブランケットを手にするとそれを葵の肩からかける。 『・・気持ちよさそう。』 葵の寝顔を見つめながらつられるように欠伸をし、いけないとそのまま自席に戻る、パソコン画面を向き合いながらキーボードを弾く。 ゆったりとした時間の中、手元にあった書類が床に落ち身を捻り拾うとそのスケジュールに書かれた一文に私は瞳奪われる。
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