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『・・っ嫌、離して』
「落ち着けって、おい」
抵抗する私を制すようにその言葉と共に私は温かさに包まれる。
抱き締められた香りから先輩でないことは分った。
暫くの沈黙の後でゆっくり身体は離れ私は改めてその男子生徒の顔を見上げる。
『・・どうして、だって私よりずっと先に』
「助けってて顔してたから、出発する前にだから気になって、ほら・・帰るぞ」
そう言って困惑した私に笑いかけ私の歩調に合わせて歩きだした。
男子生徒こそ皆の王子様、海藤葵だった。
幸いなことに女の子に振られたことが悔しかったのかそれとも恥ずかしかったのか先輩はその夜のことを誰にも言わず、私にもそれ以来何かしてくることも無かった。
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