気まぐれな優しさ。

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「あり・・っ」 礼を言おうと視線を葵に移すと勢い余って自分の指先をホッチキスの芯で傷つけてしまい顔を苦痛に歪め指先に視線を移すと薄い筋を通り紅い線が滲む。 『あ・・あ、何してんだよ?どこ?』 「別にいいわよ」 私の怪我した右手の指先を見るように葵は私の右手首を掴み自分のほうへと引き寄せる、私は痛みと葵の言葉に不機嫌そうに掴まれた手を振りほどこうと自分のほうへ引き戻そうと右手を動かす。 『いいから・・深くないな。舐めときゃ治る』 「だから良いって言って・・・」 振り払おうとする私の力など無に等しいぐらいの強い力で葵は私の手を掴み傷口をマジマジ見つめる。 私はその葵の行動に冷静さを失いそうになり視線を逸らすと指先にザラっとした温かな感触が当たり視線を戻すと葵の薄い唇の間に私の指先はしっかり挟まれその指先に見えない葵の舌先が触れる。 「離して、嫌」 私はその葵の行動に沸騰しそうな程に体中の熱があがり勢いをつけ葵から自分の指先を離し自分の胸元で右手を包むように 左手を添える。
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