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「あ、お帰り兄ちゃーん」
玄関を開けると、タオルを栗色のショートヘアに乗せ、いかにも風呂上がりの小柄な少女が出迎えてくれた。
(いつも帰ってくるの同じ時間よね。兄ちゃんって機械? なんてねー)
小柄な割にはサイズの大きいパジャマを着てにこにこと無邪気に笑う少女の名は、伊坂千沙(イサカ チサ)。隣町の私立の高校に通う二年生で、僕の妹だ。
僕は、くんくん、と鼻をひくつかせてみせる。
「お、今日はハンバーグだなぁ」
(うふふぅ)
「兄ちゃん大正解! 今日はあたしも手伝ったんだからね、特別美味しいよ!」
心が読めなくても解る。
褒めて欲しいのだ、この兄に。
僕はくしゃくしゃと妹の濡れた頭を撫でてやった。
「偉いな。早く食べたいよ。食べ終わったら勉強みてあげるから」
すると妹は満面の笑みを浮かべた。
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