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「やったぁ、兄ちゃんサイコー」
(もう、騒がしいんだから……。まぁいっか。子供は元気が一番だもの)
「お帰り公平。ほら千沙、お兄ちゃんから離れなさい」
呆れながらも優しい微笑みを浮かべて居間から出てきた中年の女性は、伊坂佐代子。僕の母だ。
「ただいま母さん」
「お帰り。さ、早く着替えてらっしゃい。せっかくのハンバーグが冷めちゃうわ」
(お、今日は公平が先に帰ってたか)
「解ってるよ。……あ、父さん。お帰り」
玄関から入ってきた、スーツを着込んだ白髪混じりの中年の男は、伊坂孝弘。僕の父だ。
「おうただいま。ん……。この匂いはハンバーグか」
「お帰りあなた。そうですよ、冷めてしまいます。早くお風呂に入りなさいな」
因みに伊坂家では、男性陣が匂いでその日の晩御飯を当てるのが何故か習慣だ。
実は僕の上に、結婚して家を出た五つ年上の兄、伊坂圭吾(イサカ ケイゴ)がいるのだが、彼も、そして僕も父も、何故か晩御飯のメニューをはずした事がない。
「じゃあ俺、着替えてくるよ」
「早く来てねぇ」
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