~天津と黒之介の出逢い(黒之介編)~

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仔犬達は、段ボール箱を “カリカリ” と引っかきながら、そこから出たそうにしている。 『どこだろうね、ここ。』 『お母さんはどこ?』 『僕、こんな狭い所に居たくないよ。』 等と口々に言う仔犬達。 だが、一匹だけ黙ったままだった。 ピクリとも動かない。 『大丈夫?この仔、動かないよ。』 その一匹は、仔犬達の中でも一番体が小さく、まだまだ未熟な仔だった。 (後に、この仔の名前は黒之介と名付けられる。) 『おーい、チビ。起きろよ。』 と他の仔犬達がワラワラと、その一匹の所に集まっていた時だった。 “ガサガサ” という音がして、一人の男の人が段ボール箱を覗き込んだ。 「犬?捨てられたのか?こんなに小さいのに…」 と仔犬達の方を見ながら言った。 「ん?どうした?一箇所に集って。」 と男は言って、仔犬達の集っている方を見て、一匹の仔犬がいるのが目に入った。 そして、その仔犬に手を伸ばした。 他の仔犬達は驚いて、男の手を噛んだ。 「痛ってぇ。何もしないよ。ただ、この仔を見るだけだって。」 と言って、一匹の仔犬を見た。 その仔犬は衰弱しきっている。 危ないと思った男は、段ボール箱と一緒に仔犬達を連れて病院に行った。
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