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~酒屋『伏見屋』の蔵~
黒壁の巨大な蔵に灯りが一つともった。蔵の中には、提灯を持った喜平と与吉が居た。
喜平が大きな酒樽の蓋を開けると、中には手足を縛られ猿轡をされた、数人の幼い女の子が居た。
与吉「こんな所に居ようとは『お釈迦様でも気がつくめぇ』」と笑った。
二人は、蔵の目の前の岸で待っていた舟に、娘達を乗せた。
喜平「頼んだぜ」
船頭は頷くと、舟を漕ぎ出し、やがて遠退いて行った。
与吉「娘一人五両だから、俺達の取り分は・・・へへ、堪らねぇぜ!」
喜平「死害の方も急ぐぞ、臭ってきて敵わねぇ」
【半刻後】
河原近くの草むらに死害を捨てた二人は、やれやれと言った面持ちで、にじんだ汗を袖で拭った。
その時、ヒュンヒュンと空を切る音が!
喜平「何だ!?」
二人の側にはいつの間にか晋松が居た!
鉄を縫い付けた革製のバンドを額に、更に両腕には、幅の広い黒革製のリストバンドをした晋松が、拍子木の一方を振り回しながら二人に迫った。
与吉「何だてめぇは!?」懐の匕首を抜くと、晋松へ突進したが、彼の左手の拍子木が軽くいなした。キーン!
喜平は近くに棄てて在った酒樽の裏に隠れた。が、一瞬早く晋松が、振り回していた木拍子を放っていた!ヒシュルルル~ッ!キュルッ!拍子木の紐が、喜平の背後から首に巻き付くと、晋松の元へと飛んだ!
シュルル~ッ!パシッ!戻った拍子木を掴んだ晋松は、樽に背を向けると、両手の拍子木を激しく引いた!
ギュギュゥ~ッ!紐が樽の縁を擦り、鈍い音と共に煙を上げた!
樽に背を付け、もがく喜平。
与吉「あ、兄貴ぃ~!」
両腕を前方に伸ばした晋松「御命!・・・御用~心~!」キィーンッ!と激しく拍子木を打ち鳴らした!
ガックリと頭をもたげた喜平は、息絶えた!
与吉「ひえぇ~っ!」腰を抜かして一目散に逃げ出した。
立ち上がった晋松が、チラリと後ろを向くと、遠方には秀が居た。
頷いた秀は、与吉の後を追った。
~逃げた与吉は聖内の寺子屋に居た~
聖内「どうしたい血相かいて?約束の金はまだかい?」
与吉「それどころじゃ無ぇ!ここもやばいかも知れねぇ!?親分の所へ!」
~月三の屋敷~
与吉から話を聴いた月三「喜平が!?・・・こりゃ例の『仕事人』の仕業かも知れねぇな」とは言ったものの、別段慌てるそぶりも見せず、酒を飲んだ。
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