~集の章~

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~屋敷の外に人影が二つ・・・~ 壱「おい組紐屋、こんな所張ってどうするつもりだい?」 竜「・・・」 壱「勝手な真似しちゃ、また八丁堀が煩ぇぜぇ」 竜「シッ!」 塀の陰に身を隠す二人。 壱、夜空を見上げて「噂をすれば影、かぁ」と、笑った。 戸を叩く音に、月三は顎で指図した。 子分が戸を開けると、古びた十手がぬうっと飛び出した。主水である。 月三「なぁんだ八丁堀かぁ、こんな時間に何の用だい?」 主水「すまねぇなぁ親分、(十手を上げ)コイツの御用だ。一寸顔貸してくれ」 月三と外に出た主水「おい、親分。おめぇ最近羽振りが良い様だが、何か美味ぇ話見付けたそうじゃねぇか?」 月三「何でぇ出し抜けに?知らねぇなあ」 主水「とぼけるなよおい。歳端もいかねぇ娘かどわかして、売り飛ばす・・・」 月三の目つきが変わった! 主水「たいそう儲けてるそうじゃねぇか?そんな美味めぇ話があるんなら、俺も一口乗せて貰おうと思ってな」 「ほぉ、その事かい・・・」背中を向けた月三は、懐からゆっくり匕首を抜いた。 竜が分銅の付いた組紐を頭上に構えた! が、その手首を壱が掴んだ。 竜「何するんでぇ!?」 笑顔の壱が、目で竜を促した。 月三が匕首を突き出した! 鋭い主水の目! カキィッ!十手が刃を挟んでいた! 主水「慌てるねぃ・・・おめぇを殺るのは、俺じゃ無ぇ!」 月三が辺りを見ると、前方に銀の簪をくわえた秀が・・・。 振り向くと後方には錠が、手槍を組みながら迫っていた。キリュンキリュンキリュン・・・。 屋敷に逃げ込んだ月三が、声を張り上げた「野郎共!」 ドドドと足音を立てて、子分達が出てきた。 与吉は身を低くし、聖内は屏風に身を隠し、目だけを覗かせたが、屏風を掴む手が震えていた。 主水「多勢に、無勢か」 夜空を白い蝶の群が覆った。朝吉の紙蝶だ! 髪に挿していた櫛を外したおむらが、子分に向かって投げた! 紙蝶の間を縫って、櫛がブーメランの様に飛んだ!シュルルルル~・・・ズビュッ! 声も上げず子分は倒れた! おむらに気付いた子分が匕首を手に突っ込んだ! そこに黒い影が横切った。ビシュッ! 「うぅ!」子分が押さえた首からは、血が一筋・・・。 おむらの横に止まった影は朝吉。針の飛び出た扇子を、横目でパチンと閉じると同時に、子分は倒れた! パシッ!戻った櫛を掴んだおむら「ありがとよ」
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