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「失礼します。」
カラリと静かに扉を開け、挨拶をしながら入ってきたのはなんと愛しの和音ちゃんだ。手には数枚の資料を持っている。和音ちゃんは僕の姿を認識すると そのまま真っ直ぐ僕に向かって歩いてきた。僕のことを助けにきてくれたのかなと甘い幻想を抱き少し嬉しくなったが、それもすぐに崩され、現実に引き戻されることとなった。
「先生。運動祭についての資料なんですが―――」
僕の目の前まで来るとその体は大きく曲がり、椅子に座っているハゲに話しかけ、資料を手渡す。その様子を見た僕は目を見開いて息を飲みこんだ。
目的は、僕じゃなくてハゲぇぇぇぇえ!?と心の中で叫び、和音ちゃんをここまで来させて僕の失態を見させた(何を今更)ハゲをギロリと睨む。明らかにデレデレしているハゲはすごく嬉しそうだ。羨ましい………凄く嫉妬した。苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々苛々。ハゲがムカつく。爆発してしまうんではないか。和音ちゃんも和音ちゃんだよ。資料なんかいつでも渡せるじゃんか。僕のこと助けにきてくれたと思ったのに―――と横にいる和音ちゃんを見て そう思い、気分が沈む。と 思いきや 次の瞬間一気に気分急上昇。
ギュッ
ぎゅ?和音ちゃんの小さな手が 僕の右腕を掴んだ。はいぃぃぃい!!??何!?何!!?何がおこったの!??と自分より身長が低い和音ちゃんを見下ろして突然の出来事に驚く。上からなので表情は見えないが僕の頭の中は妄想でいっぱいだ。これはラブアピールですか?期待していいんですか??ひょっとして………などといろいろなことを考えていると全身の体温が顔に集中した。
「和音ちゃん―――」
今の声はうわずってはいなかっただろうか。僕の赤い顔を見ただろうか。ああ――掴まれた腕が熱い―――って乙女か!!何て思ってると いきなり掴まれた腕をぐいっと引っ張られた。
「イダダダダダっっ!」
何すんの!!と引っ張り続ける和音ちゃんを睨むと逆に睨みかえされた。百倍の殺気を込められて。
「早く生徒会に行きますよ。」
と僕に言い、先生にペコッとお辞儀をしてそのままズルズルと引きずられ、職員室を出る。
ガラガラ ピシャンッ
ドアを閉めたと同時に僕の腕もパッと離す。
「痛いよ和音ちゃん!何でこんな―――」
と腕をさすりながら先程の行動にブーブー文句を言った。
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