第一章 彼女は。

3/11
前へ
/162ページ
次へ
2 出会い 校舎の周りにたっている桜の木の花びらが ヒラヒラと舞いおりてくる。春―――私立緑陽高校入学式。僕はその日、いつものように起きて いつものように支度をして いつものように登校した。別に不良っぽくする必要もないし、かと言って優等生ぶる必要もない。普通の格好をして 学校へと向かう。いつも通り。普通だ。しかし学校に着くと僕は普通ではなくなった。いや、正確に言うと僕は普通だがほとんどの生徒が異常で 僕だけ浮いて見えてしまってた。 全員 キチンと制服を着ている………!ネクタイはもちろん、革靴に学校指定のバッグに 名札まで。髪は真っ黒だし………あれ?ここ、どこだっけ?と思うほど。みんなどうしたんだろうと疑問を浮かべていると、後ろから聞きなれた声が聞こえた。 「トウマぁ~~~」 「よー蓮実。」 ふりかえると 周りと同調した、黒髪の男が走ってくる。僕は無表情で挨拶をしてやった。この男は蓮実拓斗。同い年のヤツでクラス内では存在感がかなり薄くて何か………つっかかってくる。 「浮かない顔してどうしたんだぁ?」 「浮いてるよ。充分。」 少し不機嫌そうに答えたのは、事実 不機嫌だからだ。だって 蓮実もこの間までこんな優等生みたいじゃなかったんだよ?何か裏切られた感じがするでしょ。 「あー確にその髪は浮いてるかもなぁ~」 と僕の茶髪の毛先を人指し指と中指でつまんで言う。 「うるせー黙れ。だいたい何でいきなりみんな優等生みたいになったんだよ。」 僕は蓮実のうざい手をはらいながら訊いた。僕の質問を聞いた蓮実はキョトンとすると 途端に吹き出す。 「ギャハハハハ!」 「な、何で笑うんだよ!」 「何でって、お前何にも聞いてねぇの!?」 お腹を抱えて爆笑する蓮実の足を踏んで、笑うのをやめさせる。落ち着きを取り戻した蓮実は笑って出た涙と 激痛に反応して出た涙を拭いて僕に簡単に説明してくれた。 「入学式に制服点検するって先生が言ってただろ?」 あ~~そんなこと言ってたなぁ~~。なるほど、だからかぁ~。―――って?一つの疑問が解消されると、また別の疑問が生まれた。 「制服点検するのに何でみんな優等生になるんだ?」 本当にわからない。だから訊いてみた。すると蓮実はまた笑い出した。 「バッバババ馬鹿じゃねーの!?制服点検するから優等生になるんだろ!」 だから何で?
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1108人が本棚に入れています
本棚に追加