第一章 彼女は。

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僕の苛つきは頂点に達し、未だ笑い続ける蓮実のすねにおもいっきり自分の足の爪先をぶつけた。 ガスッ 「ぎゃぁぁぁあ!!いってぇな!!」 と涙目になりながら蹴られた方の足を抱えて僕に怒鳴る。痛いだろうね。トゥーで蹴ったもんね。弁慶の泣き所だもんね。と内心ほくそ笑みながら 時折両手で蹴られたところを撫でている蓮実に訊いた。 「何で点検ごときで制服整えてるの?」 蓮実はまた笑いそうになるのを堪え、一から説明する。というか、そんなに笑えるところじゃなかったと思うんだけど。 「いや、あのな ホラ。制服点検でひっかかると 教師に凄い怒られるじゃん?だからじゃねーの?つーか だからだよ。」 それを聞いて、あれっと思った。 「僕、怒られたことないけど。」 すると蓮実は半眼になり飽きれ顔で軽く溜め息をついて 僕にデコピンをした。 「痛!」 「アホ丸出し。お前、それお前の親に教師がビビッてるからだろ。」 それだけ言うと、蓮実は手をふって 先に校舎の中へ入って行ってしまった。 何だよアイツ。 痛いんだけど。 アホって何だよ バーカ!と蓮実の消えていった方向を睨みながら、左手の中指だけ上に向けてそう思った。 式が始まるまで まだかなりの時間があるので 僕は校舎裏の広い庭に行くことにした。新入生は指定された部屋で待機中だろうし、二、三年生は式の準備で体育館にいるだろうから、今の時間 庭を独り占め出来るだろうと思ったからだ。庭に向かっている途中、一つのカップルとすれちがった。あーあ。手なんか繋いじゃって。ったく、人前でイチャイチャするな 馬鹿もんが! なんてことを思いながらカップルを見る。本当、ああいう連中は…ああいうヤツらは……… うらやましい!!! 僕だって彼女ほしいよ!手、繋ぎたいよ!あ~~~!うらやましいぃ~~!!!いやね、僕がモテないわけじゃあないんだよ?むしろモテるほうなんだよ?バレンタインデーなんかすごいよ。まず母親に貰うでしょ。次にお婆ちゃん。で、妹からも貰う。ね、すごいでしょ?血糖値がヤバいくらい上がるんだよ。僕ってモテモテだよね。うん。そういうことにしといて。自分で言ってて虚しくなってきちゃったから。 兎に角、僕はモテモテ。けど 彼女はいないんだよね。というより まず好きな人がいない。好きになるという感覚がわからない。恋愛をしたことがないんだよ。悪いかチクショー。
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