第一章 彼女は。

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「きぃやぁぁぁあ!!」 どこからそんな声が出るのかと思うくらい 先程とは対称的な甲高い悲鳴をあげた。それでも僕は聞こえないフリをして抱き締め続ける。(セクハラだ)ふと少女の顔を見ると、眼鏡の奥の大きく見開かれた瞳が、だんだん鋭利に細くなっていく。 少し、寒気を感じた。 少女の背後に、悪魔か魔王が現れた時のような、邪悪と怒りが混じった嫌~なオーラが流れ出る。少女から離れようとした瞬間――― ゴズンッ 僕のみぞおちに少女の右膝が埋まった。 「ふぎゃうっっ!」 と意味不明な声を出し 腹部の激痛に顔を歪め、膝からその場に崩れおちる僕。地面に倒れた僕は少女を見上げると、未だに 無表情、というより 冷たい表情で僕を見下していた。感情も何も無い声で僕に言う。 「逝き方教えてくれてありがとうございました。」 え?今、行き方じゃなくて逝き方って言った?いや、そうだとしても、逝き方教えてくれたのは君だよ? 「さようなら。」 どっちの意味の? 少女は制服から汚いもの(僕?)をはらうようにパンパンと手で叩く。そしてそのまま僕に背を向けて去っていった。 二ヶ月後、僕らは再会した。生徒会室で。いや、僕はあのあとずっと和音ちゃんのことを(一方的に)ついてまわってたんだけどね。そのたびに無視されて、蹴られて……それでやっと ちゃんと会話をすることが出来た。生徒会長と副会長の会話が。学校の話が。運動祭だの文化祭だの部活の大会だの 全然プライベートな会話がない。もっと こう、ラブラブなかんじというか、「昨日の晩御飯なんだった?」みたいなノーマルな話がしたい。 そんなことを思いながら毎日放課後に活動する生徒会に行っていた―――― そして現在にいたる。窓の外を見ると、暗くなっていて、もうどこの部活も終わっていた。あれから全く会話がない。それなのに全然終わっていない僕の机の上にある大量の資料。一方、処理済みの資料をトントンと揃える和音ちゃん。こういう仕事に慣れているのか、和音ちゃんはあまり疲れた様子ではない。少し、甘えてみることにした。 「和音ちゃぁん。僕の仕事も手伝ってぇ。」 「自分でやって下さい。」 間発入れずに答える和音ちゃん。やっぱり彼女に甘えることは出来ない。させてくれない。
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