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和音ちゃんの席まで着くと、それまで黒板に書かれた文字に夢中だったが流石に僕に気が付き、シャープペンを握る手がとまる。
「和音ちゃ~ん」
「見えない。どいて下さい。邪魔。」
まだノート書いてるの!?っていうか、丁寧に敬語使ってても、最後の「邪魔」で全部台無しだよ!といろんなことでショックを受けた。口をアングリと開け、暫くこの………なんと言うかな。可愛いけれど獰猛な………タスマニアデビルのような美少女を眺めた。あれ?例えがタスマニアデビルでいいのかな?和音ちゃんは獰猛じゃない……気がする。蹴るとき以外は。タスマニアデビルはこちらを見向きもしないで再びノートをとり始める。冷たいけど可愛いんだよなちくしょー。と顔がまた緩む。ただ見ているだけでとても幸せに感じた。
ガシッ
ん?
後ろから肩を掴まれ、誰だよ僕の幸せな時間を邪魔するヤツは と思いながらふりかえると怒りを露にしたハゲが口元を引きつらせて笑っている。怒りながら笑ってるなんてこのオッサンも末期だななどといろんな悪口が脳内で飛び交った。
「加賀峰ぇぇ~お前は私のことおちょくっているのか?」
あーあ。こういう質問系の怒り方が一番面倒なんだよな。テキトーに答えるか。
「いいえ別にぃ。」
ニヘラと憎たらしい笑みを浮かべてハゲにそう答える。するとプッツンいっちゃったみたいだね。
「職員室まで来なさい!!!」
そう言って教室を出ていってしまった。その瞬間 授業終わりのチャイムが鳴る。おおっ!ジャスト!やるじゃんハゲ!なんて思いながら和音ちゃんを見ると 明らかに呆れ顔で僕を見ていた。
「また後で。」
机の横にかけてあったバッグに教科書を入れながら僕にそう言う。
「えぇ~~まだいたいよぉ。それから何でまだ授業やってたの?」
「6時間目は臨時集会があったからです。また後で。」
「まだいたいってばぁ~~~」
「………」
「和音ちゃん?」
「………」
「おーい。」
「………」
「おーい可愛い可愛い和音ちゃん!将来僕のお嫁さんになる愛しの和音ちゃ―――」
「さっさと消えてください!」
大声で呼びかけるとやっと反応し、しかし辛辣な言葉と同時に顔面への右ストレートしか返してくれなかった。しぶしぶ殴られたところを撫でながら教室を出る。ドアのところでもう一度和音ちゃんの方をふりかえると 指をボキボキと鳴らしながら凄い形相で睨まれた。
「女の子なのに凄いね…」
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