第一章 彼女は。

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はぁ~あ。かったるいなぁ~~。と思いながら職員室の扉の前に立っている。ドアを開けたらキモイおやじに怒られるのかと思うとなかなか入る気がしない。同じ怒られるんだったら和音ちゃんに怒ってもらいたいななんて考えているとそのシーンが鮮明に妄想され 思わず鼻血が出そうになった。 あ。今日は生徒会で運動祭の会議があるじゃん。あ~~~絶対間に合わないな。僕は本来 会議なんてどうでもいいのだが、楽しみなんだよね。だって席がさ、和音ちゃんと隣なんだよ。会議中 コッソリ覗き出来るし、それに間隔が狭いから近寄れるし。だから楽しみなんだけど…… あのハゲのせいで自分の楽しみを奪われるかと思うとだんだん腹がたってきた。(自業自得だが。)さっさと終わらそうと思い、ドアを開けようとすると――― 「トウマぁぁぁあ!」 蓮実が駆け寄ってきた。うざいな。 「何?」 苛々してるので不満の声を隠さず(むしろ堂々と)蓮実に訊く。 「お前、授業中に一年の教室に行ってハゲに怒られたんだって?」 ハアハアと息を切らして笑いながら僕に問う。 「いーや怒られるのはこれからだ。」 と職員室を指差して言う。すると蓮実はニヤニヤと面白そうに笑って「頑張れよ」だって。あんなおっさんのところで何を頑張れというんだ。ニヤけながら階段を降りていく蓮実がとてもうざく思えて舌うちをした。深呼吸をしてもう一度ドアに手をかける。 ガラリ 開けると中は広くて、ほとんどの教師は部活の顧問に行ってるからガランとしていた。鼻をくすぐるコーヒーの香り。一瞬 いい気分になったがハゲの姿を見ると その気分は一気に断崖におちる。 「あのハ…先生。」 少し気まずそうにハゲの背中に話しかけるとくるりとふりかえり、オエッと精神的に吐き気が襲ってきた。 「やっときたか。」 と溜め息をつく。 「お前には何度注意しても駄目だな。まるで意味がない。」 じゃあ 注意しなくてもいいじゃんか。 「と、いうわけでコレ。」 机の中から大量の紙を出して渡してきた。それを見て目が点になり、訊く。 「いやいや、何がと、いうわけでですか。」 大量の紙―――それは原稿用紙で、一番上の紙に「反省文」と書いてあった。 「それの通りだ。反省文書いてこい。」 なにがそれの通りだハゲェ!全部書いてこいと!?無理に決まってんだろ!!クソがぁぁ!!そう思った瞬間、職員室のドアが開いた。
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