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   「…ん。春宮さん!」 大きな声で先生が怒鳴っている。 春宮と呼ばれた女の子は目を覚まして  「え?!」 と言った。 春宮と呼ばれた女の子は涙を流していた。 先生は驚いて、焦りながら言った。  「あ、調子が悪いの?保健室へ行く?」  「あ、いえ…。大丈夫です。」 と春宮が言うと、先生は  「そう?」 と言って、教卓へ戻って行った。  「はい。」 と春宮は答えた。 授業が終わり、春宮の周りに友達が集る。  「音々(ねね)、どうしたの?」 と友達が聞く。 春宮は答える。  「あ、今…夢を見たんだけど…その中で女の子が泣いてた。」 それを聞いて、友達が  「はぁ?」 と言うので、春宮は自分が見た夢のことを話した。  「……という訳なの。なんか5年前から涙を流している女の子や男の子、犬や猫の夢を見るのよ…。」 すると、友達は言った。  「変なの…。でも、何かを感じているのかな?」 皆は  「え?!」 と、その子の方を見た。 すると、その子は言った。  「何か…不思議な力?っていうのがあるんじゃない?」 春宮は一言だけ言った。  「さぁ…。」 授業も終わって、放課後は何もする事が無いので春宮は家に帰った。 春宮は、夢の事が気になっていた。 女の子が男の子にフラれる夢…。 あの続きがある事を、春宮は誰にも言っていなかった。 毎晩、春宮の見る夢は誰かが涙を流す夢だったが、どれも最後は殺しがあった。 あの女の子も、男の子に殺されてしまうのだ。 それを見て、春宮は怖くなって涙を流す…。 春宮は誰にも言えない過去があった。 春宮は5年前、人を殺してしまったのだ。 多額の保険金を得たので、顔を変えて今も逃亡中…。 それでも春宮は、楽しい生活をしたい、今まで通り…普通に生きていたいと願いながら、心に大きな穴を開けて生きていた。  「もう…あんな事、絶対にしない。だから、殺しの夢を見させないで。」 そう、いつもいつも春宮は涙を流しながら夜空に向かってお願いをしている。  
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