雨降る日

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  それは30年前だった。 僕はお母さんに連れられてお散歩に出掛けた。 雨が降っていた。。。 お母さんは急に立ち止まった。。。 そして 「ここにいてね。ごめんね。」 と言って去って行った。 僕は知らない所に残されてしまった。 その日、お母さんは戻って来なかった。 次の日も、その次の日も…ずっと…。 それでも僕はお母さんが来るのを待っていたんだ。。。 だけど…お母さんは来なかった…。 そして30年経った今日…雨が降っている。 30年前と同じように…。 僕の心の中を表しているかのように…。 すると、一人の“おばあさん”がやって来て一言こう言った…。 「ごめんね…。」 ………と。 (お母さんだ!!) やっぱり来てくれた。 お母さんは歳を取っていた。 僕も、もうヨボヨボの“おじいさん”になっていた。 お母さんは僕を抱きしめて 「ごめんね。捨てたわけじゃないのよ。 それにしても…おじいちゃんになったねぇ。 いい人に貰われて欲しかったけど… ちゃんと迎えに来れて良かったよ…。 本当にごめんね、クロちゃん。。。」 と言ってくれた。 だから僕は"ワン!"と吠えた。 (いいよ。僕は気にしてないよ。 だって、こうしてココに来てくれたからね。 迎えに来てくれてありがとう、お母さん。) 僕は初めて涙を流した。 僕はお母さんと一緒に天国へお散歩をしに行った。  
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