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モーシェックが運んできたのは使い込まれたスコープドッグ1台だけであった。
重要なマッスルシリンダーとMDのスロットは、実はすでにガレージに運び込まれていた。 なんとゲイブルが乗ってきた車にあらかじめ積み込まれていたのである。
ガルロが思う以上に、事は用意周到に計画されていた。
作業の段取りを決め、仕事に取り掛かってしばらくしてから、ガレージの周りに幾人かの人影がいる事に気付いた。
周囲を警戒しているのか‥?
それともガルロを監視しているのか‥?
夜になり、粗末な食事を終えた二人は、酒を飲みながらそれぞれの端末で明日の段取りを確認していた。
少し酔ったのか、モーシェックが機嫌良さそうにつぶやいた。
「酒はいいですよね。
頭が良く回る気がしますよ。」
「そうかい?」
「ええ。
考えが煮詰まった時なんかによく飲むんですがね‥、
酒の神が舞い降りるというか‥」
その時、ガルロがふと、モーシェックに訊ねた。
「なら、この問題はどう考える?
‥このセッティングでは、シリンダーが熱をもってオーバーヒートしてしまうかもしれないぜ。」
「やはり、あなたもそう思いますか?」
「あぁ。それに、ポリマーリンゲル液の耐久性もおそろしく低下するだろう。前線での運用はかなり厳しくなるんじゃないかな?」
「僕もその件については前所長等に具申したんですけどね…、
結局、技術屋というのはデータ上の最高値を求めるんですよ。
実際の運用法なんてのは考えない人種なんですよね。」
「しかし、今はアンタが責任者なんだろ?」
「それはそうなんですが… 」
モーシェックは少し寂しそうにうつむくと、これまでの経緯をポツリポツリと話しだした―
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