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「そういう訳で、プロジェクトは中止されたようにしたんです。
私がたまたま保管してた資料でこうして続けてるんですけどね。」
モーシェックは一気にそこまで話すと酒をひとくち呷った。
「なるほど。
それで責任者に抜擢されたってわけだ。」
「ええ。わたししか残ってませんでしたからね…」
「そして目立たない程度に警護をつけてるのか。」
「え?‥今、ココを?」
「あぁ。ガレージの周りには盗難防止用のカメラがついててな。
少なくとも5人は確認できたぜ。」
モーシェックは急に黙り込み、ゴソゴソとポケットをさぐった。
ガルロは構わずにまた続けた。
「しかしお粗末だな。これではこのシステムは使い物にならないだろ?」
そんなガルロの問い掛けには答えず、モーシェックは自分の端末にコードを差し込むと、その片方をガルロに投げてよこした。
ジェスチャーで、端末に挿すようにと言っているようだ。
それからは端末を介して有線回線による静かな会話になった。
モ≫盗聴されているかも?
ガ≫?!‥誰に?
モ≫ゲイブル大尉ですよ
ガ≫何故? 味方だろ?
モ≫…まだ話してない事があるんです
ガ≫何を?
モ≫この研究の本当の成果ですよ
モーシェックは続けた―
確かに前所長の研究は、理論上は画期的で素晴らしい成果を上げていた。
しかし、実際の運用を考慮すると非現実的なことが多かった。
一番の問題点は、ポリマーリンゲル液(PR液)がシリンダー内で生じる過度の負荷熱で沸騰、暴発する危険性をはらんでいる事だった。
しかし研究部では理論上、数値上での成果を追い、それらの諸問題は後回しにしたのである。
しかし、先のテロによる混乱で、何も知らない軍上層部は研究の実用化を急がせたのだった。
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