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スラム化した街の外れにある小さなガレージで、一人の青年がスクラップ同然のATを整備していた。そのガレージは鉄屑の山に埋もれるように建っていた。
ガレージの横は事務所になっていたが、その散らかり様から、自宅として使っているらしかった。
年の頃は25、6であろうか?くたびれた紺色の作業服を着ていた。
彼は以前、ギルガメス軍属の一級整備士をしていたが、終戦と共に退役し、今はコーブバトリング協会の専任整備士として日々の糧を得ていた。
今日は休暇であったが、まるでそれしかやる事がないように ―いや、本当にそれしか出来ないのかもしれないが― 黙々とスクラップを仕上げていた。
そんな折り、珍しい事に、彼の自宅兼ガレージに1人の来客があった。
その車は鉄屑で出来た迷路の様な道を迷うことなく進んできて、まっすぐにガレージへと横付けした。
身なりは一見、普通の民間人の様に見えるが、深々と被った帽子の奥に見える眼光から滲み出る威圧感は、明らかに軍人のそれであった。
焦げ茶色のロングコート下の体格は骨太で筋肉質のようにみえた。
民間人の着るような濃緑色のスーツを着ていたが、靴はピカピカだった。
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